きっと痛みを抱えながらみんな生きている。【あしたから出版社を読んで】
とても生きにくい世の中だと思う。
私がこの本を手に取ったきっかけの一文。
どうしてそうなったのかはわからないが、ずっと、生きにくいなあ、と思っている。
特にぼくのように若いころにちゃんと働いてこなかった人間にとって、社会は全然やさしくない。
なにか、心に響くものがあった。
どうしようもない自分。
どこか泣きたいような気持ちを毎日ちょっとだけ抱えながら、 それがなんでなのか、誰かに助けを求めるべきなのか、なぜ周りの人は平気そうな顔でこんな毎日を生きているのか、どこかにいけば、なにかをすれば、このモヤモヤが晴れるのか。
どうしたらいいのかわからない自分。
痛みを分け合えそうな言葉が目に飛び込んで、本を開いた。
著者の島田さんが、あるきっかけからひとりで出版社を始めたこと、始める前と後の気持ちの変化、出来事の変化。
響きだけだとすごく立派で大そうなことをしていて、近寄りがたいけど、気張らずにそっと寄り添ってくれる本でした。
一人じゃないんだって、どれだけ多くの人が同じような気持ちを抱えて生きているんだろうって。
場所も状況もみんな違うだろうけど、どこかで誰もが経験したことのある感情をフッと拾っていってくれる本。
そこからの頑張りと成長と、人との素敵な繋がり。
ちょっとファンタジーにも似た感覚。じんわりほっこりゆっくり温かくなっていくような。
読み進めるうちに、何度か、きっと全然泣くような場面じゃないのに、涙がこぼれた。
悲しいのか嬉しいのか、涙の理由は全然わからないんだけど。
定職につかず、ふらふらしている自分。
人の前ではやりたいことをやっているように見せて、自由人最高と言わんばかりの無言のアピール。私は間違ってない、これが自分の選んだ道。そう振る舞うことで、誰よりも自分を納得させたかった。
仕事が嫌いなわけじゃない。
一つ仕事を与えられれば、わりと真面目にこなす方だし、それがやりがいだと感じれる場面もちょこちょこある。
でもある時期を超えると、急に興味がなくなる。もっと自分に向いていること、自分を生かせることが他にもあるはず。
覚悟が無くて、甘くて、痛々しい奴。
世間が口を揃えてそう言うのは、わかってる。
でもどうしたらいいのかわからないんだよ。
私だってこんな自分、好きじゃないよ。
時間も、体力もあるのに、することがほとんどないというのは、つらいことだった。
だれかに、ほんのちょっとでいいから、認めてもらいたいということ。
ブログを眺めていると、ぼくの知らないだれかは内定をもらい、ぼくの知らないだれかはオフ会をやり、ぼくの知らないだれかは、気分転換に、彼女と美味しそうなラーメンを食べている。
一方、ぼくは、よれよれのTシャツを着て、寝間着代わりの短パンをはいて、彼らのブログを読んでいる。仕事に関する情報はふんだんに手に入るのに、どこにも届かずに、わけのわからないだれかの前向きな言葉を読み、自分より年下の人間の年収を知って、狂おしい気持ちになっている。
情報にひとしく触れることができるばかりでなく、自分から情報発信もできるということは、自分がいかに無能で、役立たずで、孤独かということを思い知らされるということでもあった。
痛々しい私は痛々しい文章にひどく共感した。
そこから、島田さんは就職活動をやめ、ひとりで出版社を作ることに奮起する。
全力でなにかをやってみようと。
私がこうして本の想いを伝えようとすると、すごく陳腐な表現になってしまうけど、
現状に、自分に、仕事に、生き方に、、、なにかモヤモヤを感じていたら、読んでほしい本の一冊です。