ニット帽をかぶった女を蔑む、ニット帽をかぶった女
電車に揺られる毎日。
駅に集う人々。
強制的に流れ込んでくる人間模様。
こうなりたくないと思う自分
こうなるはずじゃなかったと思う自分
まだ遅くないと思う自分
練馬はあるよねないよねとか話しながら池袋のホームで副都心線を待つ女子
えーやっぱそのバッグ欲しいですぅ
可愛いですぅとベタベタな高い声で先輩を誉める女子
声のトーンのどこか奥に、バカなフリして何事もそつなくこなす出来た女を見せつけたい欲が隠しきれていない
セールで安かったんだよねー。と何事も気付いてないかのように、面倒なことは避けて通りたい、あえて低い声のまま場のバランスを取る先輩
いつもタクシー使うよね!
この間も銀座からタクシーで帰ってたよ!
と知り合いのどうでもいい成金ぶりをホームでひけらかす男女
車内に入ると
7人中6人がマスク、5人がスマホをいじる向かいの座席
好きでもなく嫌いでもない人と食事をし、心に何一つ波風がたたぬまま、現実に違和感を感じながら、現実世界を斜に構えて蔑む自分
おかしな世界だ
こんな場所の何が楽しいんだろう
本当は毎日わくわくしながら、
明日を楽しみにしながら、
文化祭前日みたいな気持ちで過ごしたいのに、
迫りくる現実に抗えない。どうすればいいのかもわからない。
寝て起きたらきっとまたため息をつく。
家を出て、朝一の仕事はクレーム処理。
その後は楽しいのか、何のために行くのか、よくわからないホームパーティ。
ねぇ、そーいうの苦手じゃなかったっけ?
迫りくる現実に違和感を覚えながらも、
好きな音楽を聞いて、気の合う友達に愚痴って、残った違和感をブログに吐いて、
なんかすっきりたような気持ちになって、
明日が来て、その次の日が来て、一週間が経って、それを4周したら、1年の何分の1かが終わって、
そうやって死んでいくんだろう。